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「ひさしぶり」
 いつになく弱々しい母親の声だった。
「はいよ」
「元気?」
 口調は努めて笑顔を繕っている感もあったが、なんとなく小さな感じがした。
 それも、しばらくしたら理解できた。
 母が居るのは、被災地だ。
 そして、親族や知り合いは沿岸にも多く居る。
「そこらへんに亡くなった方々がそのままで、片づけられなくて、周りが瓦礫と異様な匂いで、ほんと、戦争より酷いって……」
 少しずつ情報が入ってきて、電話が通じるようになって、親族や現地に実家がある友人から話を聞いて。
 故郷があんなになっているのをテレビで観ても苦しくなる。
 それでも放送されるのは瓦礫だけだ。
 自分の周りの人の死なんて、普通に過ごしていれば両手で数えるよりも少ないかもしれない。
 それが。
「あのお姉ちゃんが、めずらしく弱気なメールばかりだからね」
 若くしてサンボルや妹を育てていたときに支えになってくれたという母親の姉。
 そういう人が弱気になっていることで、母親も不安になっていたのだ。
 サンボルには、話を聞くことしかできない。それでもある程度、話をしているうちに母親が元気になった気がした。
 テレビでは決して流されることがない。
 芸能人が関東に来る放射能が心配だとテレビで言っている。
 こうして埋もれていくのか、と、サンボルはテレビのスイッチを消したのだった。

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